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胃がんとスキルス性胃がん

0.胃ガンとは

胃ガンは、日本人にはもっとも多くみられるガンと言えます。日本人のガン患者さんの約五分の一は胃ガンです。また、診断・治療法の発達が目覚ましく早期胃ガンであれば治癒率は90%を超えています。しかし、中にはスキルス胃ガンのように、発見されにくく進行が速いため、治癒が極めて難しいものもあります。

そして一口に胃ガンと言ってもさまざまで、発生する部位やガン化する細胞の成熟度の点から以下のように分類されています。


1.「上皮ガン」と「非上皮ガン」

胃ガンはガンが発生する部位によって大別されます。すなわち、胃壁の粘膜の細胞がガン化する「上皮ガン」と粘膜の下のリンパ球や筋肉や神経などがガン化する「非上皮ガン(非上皮悪性腫瘍)」の二つに分けられます。

胃ガンの大部分は上皮ガンなので、胃ガンと言えば、通常は上皮ガンのことを指します。非上皮ガンは、比較的まれで良性のもの特別が付きにくいことも多く「粘膜下腫瘍」と呼ばれることもあり一般的な胃ガンと区別されて扱われることがあります。

上皮ガンは、最初、胃の内側の粘膜に発生します。 内視鏡で観察すると、いぼのように隆起したり、潰瘍のように陥没したり、色が変わっていたりするため、比較的早期に診断することが可能です。 粘膜に発生したガンは、5枚の膜を重ねた層のような構造の胃の壁の外側に向かってしみこむように浸潤していきます。

また、がん細胞は、胃のリンパ液や血液の流れに乗って、胃から離れた場所に散らばり、それを転移といいます。 そして、胃の壁のどの深さまで進んでいるかと、どこまで転移しているかで、ステージが決められています。 ステージは、IA, IB, II, IIIA, IIIB,IVの6つに分かれており、早期胃がんはIA, IBに含まれて、治る可能性がきわめて高い病期です。


2.「分化ガン」と「未分化ガン」

胃の上皮ガンには「腺ガン」「扁平上皮ガン」などがありますがほとんどが腺ガンです。 ガンはそもそも放っておくと命にかかわりますので悪性疾患なのですが、ガンの種類によってその悪性度が異なります。ガンの中でも急激に進行して治療が難しいタイプを悪性度が大きいという言い方をします。

そして、腺ガンは悪性度が比較的低い「分化ガン」と悪性度の高い「未分化ガン」に分類されます。ガン細胞は正常細胞が突然変異により変化したものですが、分化ガンは成熟した(分化した)細胞がガン化したもので未分化ガンは成熟していない幼い細胞がガン化したものです。

成熟している細胞の方が、幼い細胞に比べて、ガン化した際には成長が遅いことがわかっています。すなわち幼稚な細胞であればあるほど、未分化(低分化)であればあるほどガン細胞の悪性度は大きくなります。すなわち未分化ガンは分化ガンに比べると成長速度が10倍前後速くなることがあり、周囲の組織に浸潤しやすい性質をもちます。

3.スキルス胃ガン

スキルス胃ガンは、このがん細胞の成長に仕方から、胃粘膜から隆起することなく、胃の壁に深く浸潤するため未分化型に分けられます。
未分化ガンが周囲の組織に浸潤していくときに、繊維組織が増殖し、胃壁が硬く厚くなる傾向にあります。このような形で急激に進行するガンをスキルスガン(硬ガン)とよびます。スキルス胃ガンは未分化ガンの代表的な病態なため前述のごとく悪性度が大きいガンです。

また、ガン細胞が胃の壁をつきぬけ、おなかの中にこぼれ落ち、腹膜全体に広がる傾向がある腹膜播種と呼ばれる転移が起きる率が高いのも特徴です。

<特徴>

  1. ガン細胞が短期間で胃全体に這うように広がる。
  2. 発症原因が明らかではない。
  3. 30~50歳代の発ガン年齢としては若い、特に女性の発症率が大きい(女性は男性の1.25倍)。
  4. 小さな子供を持つ若い母親がしばしば発生する。
  5. ガンの浸潤や転移に関係する遺伝子が普通のガンに比べて多数発生している
    →ガンの進行が速い。
  6. 90%が腹膜に転移し腹水の原因となる。
  7. 治療が難しいことが多く予後が悪い(根治が極めて困難)。