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CDC6shRNA治療

キーとなるRNA干渉という技術


概要:
概要:細胞分裂が活発なガン細胞に特異的に大量に発生しているCDC6というタンパクを特殊な技術で除去することにより、ガン細胞の分裂を止めてガン細胞を自殺に追い込めることがわかってきた。標準治療で対応できない進行ガンに対して、注射や点滴のみで治療効果が期待できる画期的な療法である。
対象: スキルス胃ガンと診断され適切な治療法が受けられない方
進行乳ガンで適切な治療法が受けられない方
※ 他、各種ガンでも治療対象となる場合があります。
方法・頻度: 点滴、局所注射、カテーテル治療 など体に負担の少ない通院治療
1クール2~4回、進行がんの場合は、まず3クール実施し、その後は状況に応じて追加します。
所要時間: 1回2時間~6時間
治療・管理費: 例)1クール 2~4回  100~110万円
※経過によって異なりますが一般的に1~数クール必要

CDC6 shRNA治療の解説

本治療は、ガンを敵と見なさず、ガンの無限増殖能を消去し、元の正常細胞に戻すことを目指した遺伝子治療の一つである。
ガンに特異的に過剰発現し、そのガンたる性質を維持しているCDC6タンパクを、RNA干渉という最先端の技術を用いて根絶することにより、ガンの成長を停止させて、ガン細胞を自殺させるか、おとなしく老化させることにより、ガンの悪質かつ致死的な特性の消去を目指す。その治療により体に大きな負担はかからない。
化学療法で見られるような重篤な副作用もない。手術や放射線治療など有効な治療の適応から外れてしまい根治的治療が期待できない方々へ希望を与え得る最先端治療である。

ガンは正常な細胞の遺伝子に傷がつくことによって発生する。健康な方でも、その体内に毎日数千個のガンが発生しているとも言われている。傷ついた細胞が完全にガン細胞になる前に、ガンの発生を抑制する遺伝子群や免疫細胞が、その傷を修復して正常細胞に戻したり、もしくは傷ついた細胞を完全に処理することができればガンの発生は抑えられるが、加齢、過労、ストレス、喫煙、活性酸素過多など発ガンを促す要因が重なると、ガン抑制遺伝子や免疫細胞の抑止に抗して正常細胞がガン細胞に完全に変化してしまう。

本遺伝子治療は、ガン細胞をもとの正常細胞に戻す治療と換言できる。全ての進行ガンを100%駆逐できると断言はできないが、標準的治療(保険診療)で対応できない進行ガンの方が、強い副作用もなく、根治や延命を期待できる画期的な治療と言える。

実際、難治性のスキルス胃ガン、進行乳ガンの方々で治療効果が得られている。ガンの発生形態・種類に応じた適切な治療手法の確立が求められること、また治療費用が高額であることなど検討課題はあるが、本治療は、治癒に向けての治療が得られないガン患者さんにとっても、ガン治療を担当する我々臨床医にとっても大変期待できる治療と言える。


【治療メカニズム】
① ガン細胞の特性として無限増殖能や細胞死回避能力が挙げられる。
② その特性はガンに大量に発生しているCDC6タンパクが担っている。
③ CDC6shRNA(CDC6ショートヘアピンRNA)をベクターを用いてガン細胞に送達。
④ CDC6合成に関わるmRNA(メッセンジャーRNA)が破壊される。
⑤ その結果、CDC6がknock down(消去)される。
※この手法は分子生物学の最新技術「RNA干渉」により成立。

その治療メカニズムは、2006年のノーベル医学生理賞で注目されたRNA干渉という技術がキーになっている。

がんの六つの特性

六つのがん細胞の特質のうち、どれか一つでもコントロールすることができれば、がんの進展を抑えることができると言われている。
1. 自律的増殖……
がん細胞は自己増殖シグナルをつくることができるので、他からの働きかけがなくても増殖できる。

2. 無限増殖……
正常細胞は、細胞分裂するごとにテロメアが短くなるが、がん細胞はテロメアを伸長させる酵素テロメラーゼにより、縮減したテロメアを回復させることができる。そのため、何度でも細胞分裂をすることができ、放っておけば無限に(宿主である患者さんが生きている限り)細胞分裂を行い続け、増殖し続けることができる。

3. 血管新生……
がん細胞にとって増殖し続けるためには酸素や糖などの栄養が必要であるが、ただただ増殖していると、栄養が足りなくなる。そのため、酸素や栄養分の運搬路である血管の新生を行い、がんは増殖し続けることができる。

4. 細胞死回避……本来変異した細胞は、周囲の細胞から「消滅したほうがよい」とのシグナルが発せられて、自ら細胞死(アポトーシス)する。しかし、がん細胞は、周囲の細胞から、いらない細胞、余分な細胞、消滅したほうがよい細胞とのシグナルが発せられても、完全に無視し死なない。

5. 増殖停止命令の回避……
どのような細胞であれ、増えれば周囲の細胞を圧迫することになるので、バランスを整えるために、もうこれ以上の増殖をしないように、停止命令が出る。がん細胞には、その停止命令を回避する能力かある。

6. 組織浸潤、転移……
がん細胞が接する他の細胞からさらには組織へと、浸潤することができる。リンパなどを通って隣接しない臓器などへも転移することができる。

遺伝子治療など新しい治療が本質的ながん治療となるには、次の5つの条件をクリアする必要があり、CDC6遺伝子治療は、この条件をクリアできる可能性がある。

1. 副作用がなく低侵襲であること
2. がん細胞のみがもつ物質をターゲット
3. その物質はがん細胞の生命維持に必要不可欠
4. 治療での分子生物学的反応は、がん細胞のみ発生。正常細胞を傷つけない
5. がん細胞数に対して数的に圧倒的に有利であること


【本治療の期待/評価できる点】
 ・治療法が確立されていないスキルス胃ガンが根治できる可能性がある。
 ・進行乳ガンに対する治療効果が期待できる。
 ・上記以外のガンでも延命効果が期待できる。
 ・点滴、局所注射など体に負担のかからない方法でガン治療が行える。
 ・化学療法の後に見られるような体に大きな負担のかかる副作用がない。

【本治療の問題点/課題】
・末期ガンの方を中心にした過去100例前後の症例では重篤な副作用は報告 されていないが、大規模な二重盲検試験を行っていないので、使用する薬剤は公的な承認を得ていない。
・治療後一時的に悪寒戦慄が発生する。
・全てのガンの根治に繋がるものではない。 
・自費診療のため、治療費が高額となる。