テロメラーゼ抑制遺伝子が賦活化することで、hTERTが発現し、がん化が進むことを示唆する論文
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遺伝子下流のE-Boxを介したヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子の制御:転写抑制の内因性機序に関する根拠 ヒトのテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子は、テロメラーゼの反応を促進させるサブユニットを有しており、これを制御することは、人間の細胞の老化や 不死化、または、がん化において重要な役割を果たしている。 我々は、転写開始部位の下流にあるE-Box が、hTERT の特異的な転写に重要な働きをしていることを示した。E-box を介した抑制作用は正常のヒトにおける線維芽細胞や上皮細胞でも活発に認められるが、すべてではないが、テロメラーゼとhTERT を発現しているがん細胞においては機能していない。 → 論文はこちら(PDF) |
がん遺伝子は、体細胞の変異と淘汰という二つの過程を経て形成されるが、がん発生に関与るすホモ接合性欠失は遺伝子の不安定な部位に生じやすいことを示した論文
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がん遺伝子における変異と淘汰の特徴 がん遺伝子は、体細胞の変異と淘汰という二つの過程を経て形成される。がん遺伝子におけるホモ接合性欠失※は、劣性がん遺伝子上で選択的な増殖効果をもたらすことや、遺伝子の不安定な部位で局所的にDNAの切断が起こる割合を増加させることを反映して発生すると思われている。 しかしながら、がん遺伝子のほとんどにおいては、ホモ接合性欠失がどちらの機序によって発生したかは依然として解明されていない。 本研究で、我々は、746 のがん細胞株において2428カ所の体細胞ホモ接合性欠損を同定した。これらは、人間の細胞が生存において必須でないタンパク質遺伝 子の11%を占めている。 我々は、劣性がん遺伝子と遺伝子の不安定な部位でのホモ接合性欠失を鑑別する構造的特徴を解明した。発生機序の解明されていないホ モ接合性欠失の細胞群において、これらを確認したところ、その多くが、遺伝子固有の不安定性をもった部位で発生していることを示しており、劣性がん遺伝子 由来のものはごく一部であった。 この結果は、こうした遺伝子の構造的特徴の違いががん細胞における変異と淘汰に対する影響を区別するのに有用であるかを示している。多くの公的に使用可能ながん細胞株に関する、複製数や遺伝子型、遺伝子配列と遺伝子発現のデータを用いて、さらなる研究を行うことで、本研究の結果は、がん生化学や新薬の開発に関する将来の研究にとって、“試薬”としての役割を担うことが出来る。 ※ヒトの場合、染色体には父親由来の部分と母親由来の部分があり2 本で対をなし、合計46 本(22 対× 2 本+ 性染色体2 本)ある。その対を成す父親・母親由来の遺伝子を対立遺伝子と呼ぶ。 がんなどの遺伝子の変異に起因する疾患になると、染色体の合計本数が通常46 本のところが、50 本にも100 本にもなることが多い。またダウン症では約9 割が、21 番染色体が3 本になることに起因することが知られている。 さらに染色体の一部あるいは全体が増幅・欠失する場合もある。片方の対立遺伝子が欠失していた場合、もう片方が傷つく、または、不活化した場合に、機能が補完されずに病気が発症してしまう。 以上のような背景から、ゲノムコピー数と疾患の関係を見ることで、疾患メカニズムの解明につながると考えられている。 → 論文はこちら(PDF) |
がん治療にウイルスが有効利用できることを示した論文
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免疫細胞とウイルス生物学的療法の相互作用による抗腫瘍効果 INK4/AR標的とする腫瘍細胞に効果的にベクターを到達させることは難しいが、免疫賦活化細胞集団に腫瘍細胞を破壊するウイルス療法を組み合わせることにより、腫瘍にベクターを直接到達させ、これらを退縮させることに成功した。 生物学的治療を成功させることで、その相互作用効果から、さらに有効な癌治療法を開発できる可能性がある。 → 論文はこちら(PDF) |
CDC6が過剰発現することで、がんが発生することを示唆した論文
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INK4/ARF 遺伝子座の抑制を介したCDC6の発がん作用 INK4/ARF 遺伝子座は3 つの腫瘍抑制因子(P15INK4b、ARF、P16INK4a) をコードしており、ヒトのがんにおいて最も高頻度で不活化されている遺伝子座のひとつ。この遺伝子座をRDINK4/ARF が調節している。 CDC6 はヒトのがんで過剰に発現しておりDNA 複製を進めるほか、このRDINK4/ARF を介してINK4/ARF 遺伝子座を不活化させ3つの腫瘍抑制因子の発現を低下させる。 その他にも、CDC6 は発がん性RAS と共働して細胞の不死化活性や腫瘍性形質転換能を高める。また、CDC6 の発現レベルが高いヒトの肺がんではP16INK4a の発現レベルが低い。 CDC6 の過剰発現はRDINK4/ARF を介してINK4/ARF 遺伝子を抑制することにより発がん性を示すと結論する。 → 論文はこちら(PDF) |
テロメアの機能低下による老化は、細胞の自然な死と同様にがんの発生を抑えること、また老化や細胞死は主要抑制因子p53が関与していることを示した論文
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テロメアは老化を促すことでがんの発育を抑える テロメアが機能しなくなることにより細胞の老化が進むが、それによりがんの発生が抑えられると考えられてきた。 がんの発生を抑えるという点で、テロメアにより引き起こされる老化は、アポトーシス(細胞の自然な死)と同じように機能していることがわかった。 そしてそれら老化やアポトーシスには腫瘍抑制因子であるP53 が関与している。 → 論文はこちら(PDF) |
がんの抑制遺伝子p53は、アポトーシスによる細胞死や、細胞周期の調節、その他、多くの過程に関与するのみならず、細胞により自食作用を抑制する機能も有することを示した論文
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がん抑制タンパクp53 の細胞質における機能 主要ながん抑制タンパクであるp53 は、DNA の損傷や、がん遺伝子の活性化、その他のストレスに反応して、細胞内に蓄積される。p53 は、アポトーシスによる細胞死や、細胞周期の調節、その他、多くの過程に関係する遺伝子を転写活性化する核転写因子として働いていることが現在までに知られている。新たに様々な研究分野で、細胞質内におけるp53 の機能の解明が進んでおり、このタンパクがアポトーシスによる 細胞死を引き起こすのみならず、細胞による自食作用を抑制する機能を有することが解ってきた。こうした今まで知られていない機能の解明はp53 が腫瘍抑制に関する機序のさらなる理解に貢献するものである。 → 論文はこちら(PDF) |
p21の、抗腫瘍活性やそれに相反する腫瘍促進活性について解説した論文
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がんにおけるp21 の役割:入り組んだ細胞伝達回路と様々な活性機能 哺乳類では、細胞周期の適切な制御が失われることが、細胞変異を来す主要な原因の一つとして挙げられる。 サイクリン依存性キナーゼ※を抑制するp21(p21WAF1/Cip1 としても知られているが)は、様々な刺激に反応して細胞周期を停止させることが知られている。p21 は、様々な増殖を抑制する伝達系において、感知装置や促進機構として機能するための非常に重要な位置に存在している。 本稿では、p21 の調節とその生物学的機能について我々が知りうる最近の進歩についておさらいをし、とくにp21 の、p53 に依存しない抗腫瘍活性と、それと相反する腫瘍促進活性、さらにそのがんとの関わりについて解説する。 ※細胞はG1 → S → G2 → M 期からなる細胞周期を回転させることにより増殖をする。細胞周期の回転においてエンジンの役割を果たすのがサイクリン及びサイクリン依存性キナーゼ(Cyclin Dependent Kinase; CDK) と呼ばれる蛋白質であり、これらは複合体を形成して働く。 サイクリンはCDK の活性発現に必要であり、調節サブユニットと呼ばれる。細胞内には複の種類のサイクリン及びCDK が存在し、細胞周期の回転にはサイクリンA,B,D,E が関与している。その他のサイクリンは転写制御などの役割を果たしていると考えられている。 → 論文はこちら(PDF) |
CDC6shRNA(CDC6 ショートヘアピンRNA)によりがんの増殖が抑えられたり、がん細胞が死ぬ可能性があったりすることを示した論文
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CDC6 をノックダウン(消去)することにより神経芽細胞腫の増殖が抑えられる 細胞分裂時にDNA の複製が必要だが、その際CDC6 は中心となってはたらく。ヒトのがんの多くは、CDC6 が過剰発現している。本論文では、ヒトの神経芽細胞腫で、CDC6 の発生がどのようにコントロールされているか、それが細胞の増殖や死にどのように関わっているか調査した。 増殖速度が速い細胞群でCDC6 の過剰発現が確認された。CDC6 をCDC6shRNA(CDC6 ショートヘアピンRNA)を用いて消去すると腫瘍の増殖が抑えられるばかりか、腫瘍細胞の死が促された。本研究で、ヒトのCDC6 は、いくつかの経路から細胞の増殖や死をコントロールしていることが示唆された。 → 論文はこちら(PDF) |